アートが人々の価値観を変える力
写真は時間と深く関わり、人々の記憶を表現する最適なメディアです。「田じま」の50年の歴史と、地元の人々にとっての特別な意味を探ります。
「田じま」:時間の交差点

1

過去
50年の歴史が刻まれた思い出の場所

2

現在
地元の人々に愛される特別な空間

3

未来
これから作られていく新たな時間
写真:進化するメディア
1
古典技法
200年の歴史を持つ写真の伝統
2
現代技術
デジタルカメラやスマートフォンの普及
3
未来の表現
古典と現代の融合による新たな可能性
プロジェクトの3つの作品
ガラス支持体作品
19世紀の写真古典技法を用いた作品
印画紙作品
現代アートを代表する写真作品
アルミ作品
新技術によって可能になった作品
≪展示作品≫
今坂庸⼆朗 (いまさかようじろう)の想い

アートは人の価値観を変える力があると信じています。その上でアートのメディアの一つである写真は 「時間」という概念と深く関係しており、「歴史」や「時」といった人々の中に存在する「記憶」を表現するのに最も適したメディアとも言えます。今回この「田じま」さんの新たなプロジェクトのお話を聞 いた際、まずこのお店が持つ50年という歴史に興味を持ちました。そして実際にお店を訪れた際に感じた、地元の人々に愛され、彼らの特別な時間を過ごす為の貴重な場所なのだという事を理解した際に 「田じま」はお客さんにとって大切な時間を共有するだけでなく、またそれらを記憶する為の非常に重要な場所でありデバイスのようにも感じました。つまりここには訪れた人々の思い出の時間(過去)が あり、今という現在が存在し、そしてこれから作られていく未来の時間があります。アートが直接人々に語りかける事はありませんが、それを見た人がこの「田じま」がどのようなお店で、どれほど大切な場所なのか、その事に気づいた時にハッとなるような驚きと感動をこのアートプロジェクトを通して皆さんと共有できたらと思っています。 写真というメディアの歴史は他の芸術、例えば絵画や彫刻のそれと比べるとまだ200年程と比較的新しいメディアですが、人々の記憶を留めるデバイスとしてだけでなく表現方法として近年非常に注目され ています。そしてスマートフォンやデジタルカメラに代表されるように今後も益々進化していくでしょ う。その上で今プロジェクトにおいて、私はあえて古い写真の技法を用いてそれを現代の技術と合わせる事によりさらに進化させようと試みています。今回私が制作させて頂いた作品は大きく3つ。
  1. 19世紀の写真古典技法により作り出されたガラスを支持体とした作品。
  1. 現代アートにおける写真作品を代表する印画紙上の作品。
  1. そして近年の新しい技術によって可能になったアルミを用いた作品となります。
この3つを一つの空間に存在させる事により「田じま」のみならず、訪れるお客さんの過去、現在、未来 を表現しようと試みています。その上で、作品のモチーフは私が常に題材としている自然のランドスケー プを用いました。これらのイメージは私が過去数年間幾度となく訪れて、作品制作をしているアメリカ南部の地域で撮影したものです。メキシコ湾と接するこのエリアは手付かずの自然が残っているだけでなく、上流に行くに従って細かな支流に分かれ、潮の満ち引きによる変化が非常にゆっくりな事で知られています。目を凝らさなければ分からないほどゆっくりと、しかしながら確実に動く水面の様子は、そこに流れる時間の感覚を希薄にし、同時にこのランドスケープが原始の時代からそこにあり、そして未来永劫続くように感じさせます。 これらのイメージを選んだのは偏に自然、つまり水や植物といったものが私たちのごく身近にありながら、私達人類よりはるか以前から存在し、姿形を変えながら存在していくという点で時間という概念を強く意識させるものであるからです。一見何の脈略もないように映るこのランドスケープに、歴史、時間と言うものがいかにかけがえのないもので、今という現在が未来へと続く架け橋になる事を表現してい ます。そしてこれらの作品を通して「田じま」の持つ人々の歴史と、今後も常に人々の大切な瞬間に寄り添いながら大切な記憶となり、そして同時に未来になって欲しいという希望を感じて頂けたらと思って います。

[アーティストプロフィール]
1983年広島⽣まれ。⽇本⼤学芸術学部を卒業後、2007年に渡⽶。ニューヨークのプラットインスティテュートでMFAを取得し、現在ニューヨークのブルックリンを拠点に活動。これまでにミネアポリス美術館、東京都美術館、パリフォト、Miyako Yoshinagaギャラリー等での個展やグループ展で作品を展⽰。作品は、サンノゼ美術館、ミネアポリス美術館、ミード美術館/アマースト⼤学、カーネギー美術館、ニューオリンズ美術館、また複数のプライベートコレクションに収蔵されている。
自然と時間の関係

身近な存在
水や植物は私たちの日常に溶け込んでいます

悠久の歴史
人類よりはるか以前から存在し続けています

変化と継続
姿形を変えながらも、存在し続ける自然の力

時間の象徴
自然の姿は時間の概念を強く意識させます
「田じま」の過去・現在・未来

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1

未来への希望
人々の大切な瞬間に寄り添い続ける場所

2

現在の役割
特別な時間を共有し、記憶を作る重要な場所

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豊かな歴史
50年間積み重ねてきた人々との絆
アートプロジェクトの目指すもの
このプロジェクトを通して、「田じま」の持つ人々の歴史と、今後も常に人々の大切な瞬間に寄り添いながら大切な記憶となり、そして同時に未来になって欲しいという希望を感じていただけたらと思います。
アートは直接語りかけませんが、見る人の心に「田じま」の大切さを気づかせ、驚きと感動を共有できることを願っています。