アートは人の価値観を変える力があると信じています。その上でアートのメディアの一つである写真は 「時間」という概念と深く関係しており、「歴史」や「時」といった人々の中に存在する「記憶」を表現するのに最も適したメディアとも言えます。今回この「田じま」さんの新たなプロジェクトのお話を聞 いた際、まずこのお店が持つ50年という歴史に興味を持ちました。そして実際にお店を訪れた際に感じた、地元の人々に愛され、彼らの特別な時間を過ごす為の貴重な場所なのだという事を理解した際に 「田じま」はお客さんにとって大切な時間を共有するだけでなく、またそれらを記憶する為の非常に重要な場所でありデバイスのようにも感じました。つまりここには訪れた人々の思い出の時間(過去)が あり、今という現在が存在し、そしてこれから作られていく未来の時間があります。アートが直接人々に語りかける事はありませんが、それを見た人がこの「田じま」がどのようなお店で、どれほど大切な場所なのか、その事に気づいた時にハッとなるような驚きと感動をこのアートプロジェクトを通して皆さんと共有できたらと思っています。 写真というメディアの歴史は他の芸術、例えば絵画や彫刻のそれと比べるとまだ200年程と比較的新しいメディアですが、人々の記憶を留めるデバイスとしてだけでなく表現方法として近年非常に注目され ています。そしてスマートフォンやデジタルカメラに代表されるように今後も益々進化していくでしょ う。その上で今プロジェクトにおいて、私はあえて古い写真の技法を用いてそれを現代の技術と合わせる事によりさらに進化させようと試みています。今回私が制作させて頂いた作品は大きく3つ。